街中の狭小地、もしくは所有する山に家を建てるという二つの選択肢の間で迷っていた建築主。
建築主とともに行った、後者の山での敷地調査。
そこでは、インフラを引き込むのに相当の費用がかかることが判明。
そもそも、現在の生活の基盤が街中にある施主一家の日常生活を、豪雪地帯の山の中に移すことは現実的ではないように思えた。
街中の狭小地で自然を感じ豊かに暮らすこと。
僕の頭にふとそんな構想が浮かんだ。
まずは施主夫妻から、山での暮らしで実現したかった出来る限りの要望を聞いた。
庭、広い土間、家庭菜園、パーマカルチャー、駐車スペース…。
敷地面積は22坪、建てられる面積は13坪程度(建ぺい率60%)という限られた土地の中では、全てを叶えるのは難しいと思ったが、
屋上という「魔法」を使うことにした。
屋上には、階段室を挟んで性質の異なる二つの空間を設けた。
ウッドデッキを敷き詰めた寛ぐ為の空間と、雨水タンクを設けた家庭菜園の為の空間だ。
ウッドデッキ側は、板張りの手すりや船舶ランプなどによりリビングのように落ち着く空間を演出。真夏日でも、海からの風が爽やかに抜け気持ち良い。
タープを掛ければ、ビニールプールや、流しそうめんを楽しむこともできる。
子供たちには格好の遊び場、大人にとってはちょっとした息抜きのための隠れ家となる。
夕焼け空に飛んでいく飛行機、夜空の星、新潟花火なんかも楽しめる。
スリ鉢地形にあるにも関わらず、地面から7m高い場所に立っただけで、雄大な自然を感じることができるなんて、想像はできなかった。
山に家を建てたい!その裏側にある希望を、街中で手に入れたようだ。